妄想タケノコ
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焼失
学生時代属していたサークルから、
毎年夏合宿に使っていた建物が、地元の中学生の失火で焼失した、
再建費用の寄付してもらえないかという、手紙が来た。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

二十歳の前後の夏を四度、
どっぷりとサークルに浸ってすごした合宿所。

今も、草いきれの強く匂う日に、木立ちの中を通れば
あの日々が、まるですぐそこにあって、
この手で触れるものであるかのように蘇ってくる。

20年の間に、合宿所は一度、建てかえられているので、
今回焼失した建物は、私の思い出の中のそれとは異なる。

それでも、あの場所で繰り返しされてきた夏が、
今年は裁ち切られると思うと、ひどくショックだ。


富士山麓の湖畔。

サークルの活動では全く見るところがなくて、
人に迷惑もかけ、自分でも居心地の悪い思いをしながらも、
しつこくそのサークルに居続けたのは、
ひとつには、夏になれば、その涼しく過ごせる合宿所に行けるから
だったのだと思う。

東京から車で2時間。
普段の生活から微妙に隔絶された状態で過ごす夏は、
人間関係も奇妙に濃密になって、
ぼんやりものの私でさえ、女同士のどろどろや、
色恋沙汰に巻き込まれたりした。


そもそも色恋沙汰なんぞは一生なしでいいやというのが
大学入学当所の気分だったはずなのだが。


高校1年の時、それなりに好きだった男の子と付き合って、
一緒に過ごせば、それなりに楽しかったのだけれど、
ふと気が付くと、自分ひとりで過ごす時間が削られてることが
耐えられなくなっていた。


「えーと、別れてくれませんか」

お気に入りの喫茶店で別れ話なんて、するべきじゃない。
その後、しばらく、行きにくくなるから。

「なんで?理由は?」

「えーと、他に好きな人ができたから」

…こういうウソはいけない。
他に好きな男が出来て別れましょうっていうなら、
それなりの予兆もあって、相手だって気づかないはずはない。

なんだかんだと問い詰められて、その理由は嘘とあっさりばれる。

「セックスしたがるのが、いや?」

はい、いやです。
間違って、うっかり妊娠なんてことになったら、
どう処理するにしても、
こっちが傷つくのは半端じゃないもん。

「じゃ、そっちは求めない」

その場の思いつきで挙げる別れる理由をひとつひとつ潰されてゆき、
なにやら額に脂汗が浮かぶ。

「えーと、勉強する時間が惜しい」

女子高校生が、それもまだ1学年で、
そんなセリフを口にしていていいものなのか。

しかし、何故か彼はそこで納得。

「そっか、わかった。」

そして彼が二人分のコーヒー代を払って喫茶店を出る。

彼は私の肩を軽く抱いて、

「じゃあ、勉強、頑張ってね」

と言って、結構爽やかに去って行った。

おーい。それで納得できるなら、
あの、息詰まる攻防はいったいなんだったんですか?

大学受かったら、彼はわざわざおめでとうの電話をくれた。
が、そんなことはどうでもいい。

まあ、とにかくそういうわけで
愛だの恋だのといって人と関わるのなら、
とても耐えられないような息苦しい時間も
潜り抜けなくてはならないことを学習した私は、

「もういい。絶対自分には無理」

という結論に達し、
あとの一生は、なんとか傍観者に徹して、
静かに生きて行きたいものだと思ったのだが。

繁殖適期の生き物だから、
緩やかにとはいえ隔絶された環境で詰め込まれて過ごせば
好きだとか嫌いだとか、
巻き込まれるのを避けるのは、ムリ。

そういうわけで。

本来なら人生という舞台の端っこの方で
適当に割り振られた役を、適当にこなしていくはずが、

むりくり舞台中央の方へ、ずずっと押し出されて、
下手な踊れない踊りをご披露して失笑を買った。

そういう情景が浮かんでくる。


それが、あの、


湖畔の夏。

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コメント
この記事へのコメント
Non Title
前から思っていたのですが、コロンさんの文章は、中原中也の詩に雰囲気が似ているような気がする。
(けど、どうだろう?)

自分には表現できない、形のないものに、名前をつけて形にして切り取ってくれるようなコロンさんの文章が、自分はとても好きです。
2006/06/26(月) 02:11:00 | URL | V #-[ 編集]
Non Title
Vさん、コメント、ありがとうございます。
えぇっ!中原中也ですか。
確かに、詩集持っていました(笑)
学生時代、それほど本を沢山持っていなかった頃に
側にあった本なので、影響が大きいのかもしれません。

中原中也…若い頃、どうしても魅かれずにはいられなかった詩人ですが
久しく読んでいません。今読むと、どうなんでしょう。
魅かれるけれど、また、
この人は、社会のなかで生きていくには、何か大事なものがけているんだろうな
と感じたものでした。
2006/06/26(月) 07:02:04 | URL | コロン #9K54kpoI[ 編集]
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