妄想タケノコ
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無題
今日はちょっと落ち込みモードで。
別に今、落ち込んでいるわけでは全然ないんだけど。
そういう文章を書きたい気分。
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大学何年生の頃だったか、村上春樹の「ノルウェイの森」がベストセラーになった。
この本自体は、それ以前から出版されていたらしいのだが、
出版社の戦略で、冬が来る頃、赤と緑のクリスマスカラーに装丁し直されて、
どの書店でも、上巻と下巻、並べられて平積みにされていた。

私がその本を買ったのは………
先輩たち(当時の私の生活は、ほとんど男性の先輩ばかりだった)の、
「濃厚な性描写」と「あっさりとした性描写」という
性描写について、人によって異なる意見があったからだったか。
そして、読んで見事にはまった。
繰り返し、繰り返し読んだのは、
登場人物「直子」のあやうさに共感したから。
自分自身の存在の頼りなさ。
こうありたい、こうありたかった自分と、現実の自分との距離。
物心ついてから悩まされつづけていた、
周りの社会と折り合ってやっていけないのではないかという不安感。
身を絞られるような喪失感。
(実際には私には失って取り戻せない何かという物はなかったけれど)
何も始めていないのに、自分の足で立って行けないと感じる弱さ。
(「直子」は弱い人間ではないかもしれないが)

基本的には、自分の好きな本を人に薦めたりしない私が、
当時、既に付き合っていたパートナーに、わざわざ
「この本読んでる」と告げたのは、
やはり心のどこかに人を絶対立ち入らせない場所を持つ彼が、
この物語に共感するものがあるだろうと思ったからなのか。

しかし、彼が「ふーん」と言ったきり。
私のすすめは、忘れ去られた。

数ヶ月して、彼が電話で
「お前、『ノルウェイの森』持ってただろ?
 今度貸して」と言った。
「なんで?」
訊ねると、
「……さんに勧められた」
……さんは、彼が、高校時代から大学の始めにかけて、好きでたまらなかった女性で
いい家のお嬢さんばかりが通う、高級住宅地にある、
オフホワイトのセーラー服がかわいい学校の出身で、
女性から見ても美人で可愛らしくて、
身長170センチで、184センチだった彼との身長のバランスもよい、という、
なかなか、今カノの私の気持ちを刺激する存在だった。
もっとも、彼の、偏狭というか気の付かない性格のためか、
彼は振られて、
その後は、片思いや付き合っている人についての相談をしたりされたり、
という友人として付き合っていた。

私が勧めたときはスルーしたのに、といささかむっとして、
「で、どうして読みたいと思ったの?」と聞くと
「……さんの話聞いて、「直子」って子の性格がIに似てると思って」

Iさんというのは、私のサークルの先輩で、
やはり同じサークルだった彼の同期だった女性だ。
彼は、ほとんどその大学生活の間ずっと、Iさんに片思いしていた。
(と、言いつつ、他の女性と付き合って最後まで行った事もあるのだけれど)
Iさんは、彼のことはまったく眼中にはなくて、
野球部のかっこいい彼氏がいたり、その合い間に、
3代上の、コーチとしてサークルにやって来ていた先輩と
一時的に付き合いそうになったりしていた。
同性の後輩から見るとからっとしていて、面倒見がよくて、
フェロモンが出ているとか、そんな感じではなかったのだけれど、
彼の代、男5人いるうち、3人が彼女に片思いしていた。
同期の異性から見ると、何か危なっかしい弱さみたいなものがあったらしい。
まあ、危なっかしさだけで、異性をひきつけられるというものでもない。
実際彼女の性格は、ちょっと肩肘張ったところもありながら、素敵だった。

彼にとって、「直子」は「Iさん」、なのか。
危なっかしくて、遠く離れていても、いつも気になる存在。
その人になにかあったら、その人が泣いていたら、
今の生活を放り出しても、駆けつけなくてはならない存在。
(直子について、違うイメージを持っている人もいると思うが、
 私にとっての直子は、そんな感じ)
そして、私はそんな時に放り出されてしまう側。

付き合うようになって、身体を重ねるようになっても、
「彼がずっと好きだったのはIさん」
心のどこかにいつもそんな思いがあった。
出会った頃、彼がIさんを好きというのは周知の事実で、
彼と、もう一人Iさんを好きなTさんとの動静について、
「今日のSさんとTさんとIさん」というのが、
私たち後輩の、日々の噂話のタネ、という状態だったから。
「ノルウェイの森」が出た頃には、そんなことも大分忘れていたのに、
そんなきっかけで、落ち込みのらせんに入っていく私。

大学時代、私は、周りとの生活においてかなり恵まれていて、
学業でもサークル活動でも、明らかに能力が足りなくて、
周囲に迷惑をかけ続けていたにもかかわらず、
そのことを表立って非難するような人はあまりいず、
皆親切で、私自身、そんな生活を楽しんでいた、と思う。
それに、様々な失敗や、まれな他人の意地悪に合って落ち込んでも、
表に出さないようにしていた。
まあ、二十歳にもなれば、みんな、そんなものでしょう?違う?
だから、彼にとっても、「直子」のイメージと私が結びつかないのは
仕方ないといえば、仕方なかったことなのだけれど。


「彼にとって自分は一番の存在ではない」
こういう類の思い込みが、客観的な事実に基づいたものではなくて
自分の性格に起因するものなのだ、と気づいたのは、
子どものひとりがやはりそういう性格だったおかげだ。
けれど、気づいたからと言って、
結婚当所や、転勤で引っ越すたび、あるいは言葉の通じない異国で、
また動きが激しくてやきもち焼きの子どもを抱えて、
外出も電話もままならなくて、
孤独感に死にそうになったときに、
いつも傍にいて慰めてくれなかったという想いが
忘れられるわけではない。

いつも、「つまり、彼にとっては自分はどうでもいい存在なのだ」
と思い出すと、何日も浮かび上がることが出来なかった。



その、一番初めが、
大好きだった
「ノルウェイの森」




…単に、彼は「言われなければ、気づかない人間」で
私は、「自分の状況を言葉にして訴えられない人間」だった
っていうことだったんだけれど。ね。
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コメント
この記事へのコメント
Non Title
いつかコロンさんがノルウェイの森について
書くのではないか、と思っていました、なんとなく。
で、なんとなくコロンさんという人は、直子と、レイコさん
を合わせた様な印象があったので、妙にすんなり
納得してしまった訳です。なんとなくですけど。

タチアオイの花は初夏の日差しにすっくりと
背筋を伸ばして立っているけれど、その花びらは
箔打紙のように薄く、儚げで頼りなさげです・・。
僕はあの花から、力強さよりも、もどかしい健気さ
のような思いを受け取ってしまいます。
なんだか、そんな事を考えてしまった・・。


僕は帰省の際、上巻を買って列車に乗り
途中下車して、下巻を買い、又列車に乗って
帰り着くまでに全部読んだ思い出があります。
飛行機が嫌いなんです(笑。
2006/06/13(火) 23:29:11 | URL | レン #FsQlnSOY[ 編集]
Non Title
レンさん、
我ながら、コメントしにくい文章書いてやったぜ!って思っていたのに。
読まれていましたか(笑)>いつか書くのではないか

実際には、私には、必要な「鈍さ」がちゃんと備わっていて
直子やレイコさんのようには、壊れてしまわなかったわけです

タチアオイ…
ムクゲのようにうわ~っとたくましくやってますが。
あ、でも、そう。
たまに、ちゃんとしてる奥さんって、怖いなあ、
なんて思ってるときは、たしかに、自分がたよりない感じ。
せめて、タチアオイのように、背筋を伸ばして立つようにしよう。

ああ、いいですね。
長編が読みきれるくらいの旅。
長い間、移動のためにそんな時間をとるのは、
夢のまた夢と思っていましたが、
そんなにばたばたするのは、
人生の中の思ったより、短い時間だけだったことを
この頃、発見しました。

2006/06/14(水) 03:58:54 | URL | コロン #9K54kpoI[ 編集]
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